消費者志考 CCFSコラム

 

THINK! 消費者、GO! 消費者                         201636

 

 

消費者にとっての影響は?~消費者庁・国民生活センターの徳島県移転案を考える~

 

 

 消費者庁と国民生活センターを徳島県に移すという検討が行われている。東京一極集中を是正し、地方創生へという国の方針によるものだ。私たち消費者にとってどのような影響があるのだろうか。なかなか情報が伝わってこない。「電話を受けるだけならば、どこでも一緒だ」という声も聞かれるが、まずは消費者庁・国民生活センターがどのような役割を果たし、消費者に寄与しているのかを考える必要があるのではないか。

 

 今回の移転検討の話に際し、2月8日現在、全国27の弁護士会、司法書士会、そして39の消費者団体や適格消費者団体*などから反対の声が上がっている。徳島県が招致に手を挙げた理由、事業者の懸念、新聞報道等の動きも併せて下記に紹介する。

 

 

弁護士会や適格消費者団体からの主な意見  

 

1.消費者庁は司令塔

 

 過去に、不良製品の回収や食の安全に関する対応の遅れ、担当官庁のない「すきま事案」の未解決が、事故拡大の一因となり、問題となった。例えば、ガス瞬間湯沸かし器事件は20年前の事故情報が

経済産業省(当時は通商産業省)の部門間で共有されず、その後中毒事故が多発した。また中国製冷凍ギョーザ食中毒事件では、政府の対応の遅れから被害が拡大した。こんにゃくゼリーによる窒息死事故では、規制する法律(担当官庁)がない、「すきま事案」として問題となった。(食の安全に関して規制を行う食品衛生法(厚生労働省)では、食品の大きさに関する規定はない。一方で、経済産業省管轄の法律でも食品の安全に対して規制するものはない。)
 
消費者庁は、このようないわゆる「すき間案件」に対応するため、全国の消費生活センターに寄せられた食品偽装や製品事故、悪質商法などの情報や相談を一元的な窓口となって集約、分析し、相談者の「たらい回し」や製品事故の発生や被害拡大の防止に努める消費者行政の「舵取り役」として創設された背景がある。38本の法律を所管しており、多くは他省庁との共管である。ほとんどの省庁と関連しており、頻繁に他省庁とアクセスすることが不可欠だ。地方移転により、他省庁との連携が遅れ、機能低下になる恐れがある。

 

 

2.緊急対応機能の低下

 

 消費者庁は重大事故発生時には、官邸と連絡を取りながら、関係省庁と連携して事態に対処しなければならない。過去には以下のような対応がなされている。

 

   冷凍食品から農薬が検出されたため、自主回収するという事業者からの発表を受け、消費者庁が直ちに消費者向けに注意喚起した。また、関連する農林水産省、食品安全衛生委員会、農林水産省、警察庁と連携し、情報収集と被害拡大防止等の対応にあたった。

 

   東日本大震災発生時には、消費者庁長官主宰で会議を開催し関係省庁と連携して震災後の生活物資確保を図った経緯がある。

 

 こうした緊急事態の際はインターネットや電話など遠方からの情報交換や発信で効果的な施策が実行できないのではないか。

 

 

3.行政処分等の執行機能低下

 

 消費者庁の行政処分等の執行に際しては、事業者を呼び出しての事情聴取や立入調査等の事実調査が必要である。多くの事業者は首都圏に集中しており、消費者庁が移転することにより、多くの時間とコストがかかる可能性があり、迅速な執行ができない恐れがある。

 

 

4.消費者庁や他省庁との連携機能の低下

 

 国民生活センターは、消費者行政の中核的実施期間である。全国の消費者相談の内容を分析し、消費

者関連法の制定・改正の際に事実を明らかにする資料を作成し情報提供を行っている。

 消費者庁と連携し、諸問題を検討し、各省庁に意見を述べたり、消費者庁と定期的な協議会を設けて

いる。このような連携機能が低下する恐れがある。

 

 

5.センターオブセンターズの機能の低下

 

  全国の消費生活センターの相談処理の支援機能として、相談支援、情報提供、商品テスト、ADR(裁判

 外紛争処理)などを実施している。問題のある取引をしている事業者との協議を行い、その情報を各地に

 発信する。その他、紛争解決委員会においては、事業者と消費者の出席を求め和解の仲介手続きを行って

 いる。

  これらの機能を果たすためには多数の専門家の確保、協議のための事業者の来訪・訪問が必要である

 が、地方に移転した場合に専門家の確保や事業者が来訪する事ができるかなどが懸念されている。また、

 各地から集まってもらうには費用がかかる。

 

  上記、5項目以外にも、消費者団体・事業者団体とのコミュニケーションが減少することを懸念する声

 がある。実際に消費者庁が創設されたときから、消費者庁に相談したり、コミュニケーションをとってき

 た事業者が、今後どうすればよいのか悩むのではないかという声も聞こえてくる。

  また、消費者庁、国民生活センターには多くの専門性が高い非常勤職員がおり、地方移転によりその人

 員が損なわれる可能性を指摘する声もある。そうした専門性の高い非常勤職員を地方で現在の規模を確保

 することは困難であり、また育成するのには多くの時間を要することとなるだろう。そうなれば、そのよ

 うな力を必要とする地方の相談窓口にも影響を及ぼし、消費者自身相談を受ける上で、不利益を受ける可

 能性がある。徳島県には適格消費者団体が存在しないことも記しておく。

 

 

全国の中で、なぜ徳島県か ~徳島県の説明~

 

 ①   消費者行政の改革に貢献し、全国モデルとなる先進的な事業を行っている

 

 ②   消費者問題の人材育成が進んでいる

 

 ③   全国屈指の「光ブロードバンド環境」が整備されている

 

 

新聞報道等の動き

 

 上記、徳島県の説明の徳島県の、消費生活相談員の有資格者が119人、人口10万人当たりの消費生活相談員の配置が全国1位との説明に対し、2015年4月時点で配置されている相談員の数は県下全域で43名、内有資格者は23人などと反論の記事が見られた。

 

 その他、省庁の移転にあたっては、国全体にどれだけプラスになるかという観点での検討が不可欠だ。消費者庁移転については、効果が今一つはっきりせず、最終判断を急がずに移転の是非を慎重に見極めるべきだ。東京を離れることで消費者庁の存在感がさらに弱まるのではという懸念がぬぐえないという記事もあった。

 

 

 

 サステナビリティ消費者会議では、このような状況下で、消費者関連団体や消費者にあまり情報が伝わってこないこと、十分に議論・検討されないまま、移転話が進んでいくことに違和感がある。どの機関も、地方創生に反対している訳ではなく、消費者全体に及ぼす影響を考えての反対意見であることが読み取れる。

 現在と同等以上の機能発揮ができるかという点に応えられるかも重要だ。もし、移転が実現した後に、やはりうまくいかないということがあれば、税金の無駄遣いにもつながりかねない。一方で、東京で災害などが発生し、機能不全になる可能性を考えると、地方に一部の機能を持つのは、リスク回避になるかもしれない。まずは、現状を消費者に広く伝え、「知る・考える」きっかけにしたい。

 

 

 

*適格消費者団体とは…消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体として内閣総理大臣の認定をうけたもの

 

 

 

参考資料

 

・日本弁護士連合会

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・東京弁護士会

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明」

 

・特定非営利活動法人 大分県消費者問題ネットワーク

 

「消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する意見書」

 

・特定非営利活動法人 京都消費者契約ネットワーク

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・特定非営利活動法人 消費者支援機構関西

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・特定非営利法人 消費者機構日本

 

「消費者庁、消費者委員会及び国民生活センターの徳島移転検討について」

 

・特定非営利活動法人 消費者支援機構福岡

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・NPO法人 消費者支援ネットくまもと

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・特定非営利活動法人 消費者被害防止ネットワーク東海

 

「消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する意見書」

 

・徳島県 「消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの徳島移転」の実現に向けて

 

・朝日新聞 社説「省庁移転 全体で筋通るものに」

 

・日本消費者経済新聞社 ブログ記事「徳島県の相談員資格保有率 47都道府県中40位、相談員配置率36位」

 

・一般社団法人 全国消費者団体連絡会「消費者行政機関の地方移転の反対意見表明」

 

・まち・ひと・しごと創生本部HP