消費者志向宣言 企業評価

第3回 第一生命

 

ベストプラクティス【第一生命―従業員の自律的取組みによる消費者志向経営の実現】

 

消費者の視点に立った消費者志向経営を実現するためには、経営トップのコミットメントだけでは十分ではない。従業員の消費者志向経営の実践が消費者志向経営の実現をたしかなものにする。第一生命では従業員による自律的な実践を高めるものとして、人材育成とお客様の声に係る業務品質の向上の実践を挙げている。

 

これは、消費者志向経営の「従業員による自律的な取組み」として評価できると考える

 

 

 

サステナビリティ消費者会議(CCFS

 

2018627

 

解説

 

社会全体で企業の消費者志向経営を促すことを目的に、消費者志向自主宣言をした企業について、特に他社の模範となる取り組みをしている事例をベストプラクティスとして評価する。なお、ベストプラクティスとしての評価基準は次の3点とし、そのいずれかに該当する事例を紹介する。

 

 

 

【評価基準】

1.消費者志向を消費者の声を聞き、消費者の不満・不利益の解決や商品等の改善を行うことにとどまらず、経営の仕組みの中枢に位置づけ、継続・実践しているもの

2.持続可能性に関わる社会課題に取り組み、持続可能な社会における消費者志向経営を追求しているもの

3.消費者志向自主宣言後、その取組みが著しく進展したことがフォロー報告で確認できるもの

 

 

 

上記事例は評価基準1に該当するものとして評価する。

 

 

 

企業が消費者志向経営を実現するためには体制の構築が不可欠であるが、そこには消費者志向経営の方針を実践していく従業員が必要であり、消費者志向経営実現の両輪ともいうべきものである。2016年に公表された消費者庁の「消費者志向経営の取組促進に関する検討会報告書」においても、事業者に求められる「事業者の組織体制の整備・充実」の1つに、従業員の積極的活動(企業風土や従業員の意識の醸成)」として、「従業員一人一人による消費者・顧客の視点に立った行動を根付かせるための取組の実施」が記述されている。

 

現在、企業では消費者窓口で消費者対応に従事する従業員への育成が盛んにおこなわれている。しかし、それだけでは十分ではない。消費者志向経営は消費者対応だけの問題ではなく、経営としての消費者志向だからである。従業員は消費者と接しているかどうかに関わらず、さまざまな部署で自社の業務のなかで消費者志向経営の実践が求められる。そのなかで消費者志向経営として従業員の自律的取組みを行っている第一生命の例を紹介する。

 

 

 

第一生命では、保険会社として目指すべき姿の1つとして、「お客さま第一を実践し、自ら高めていく保険会社である」ことを掲げている。ここで注目すべきは「自ら高めていく」としていることだ。消費者志向経営は方針に従って進めていくだけでは実現できない。消費者の声は一律ではなく多様であり、社会が変わればその声も変わる。また時代の変化によっても変わっていく。その中で消費者の視点とは何かを各々の業務のなかで常に問い、社内に適切にフィードバックし改善していくことが欠かせない。消費者志向経営においては、従業員自らが考えながら実践していくこと、つまり自律的に動いていくことが重要である。

 

同社の自律的な取組みは、一つに人材育成があり、二つに業務品質向上における実践がある。

 

第一の人材育成については、その一つに、消費者志向人材育成として消費生活アドバイザー資格取得の推進がある。同社の資格保有者は、2005年の78名から201741日現在で494名となっている。消費者志向の人材育成について社内研修だけではむずかしいことから消費者志向に関連する資格取得を奨励することは一つの有効な取組みと考える。二つ目の人材育成として、営業職員である「生涯設計デザイナー」について、「高い専門性と職業倫理の追求」を掲げ、その指標に「チーフデザイナー層占率」や「コンサルティング専門性の向上」を挙げている。営業職員は契約前、契約時、保険期間中、さらには支払時などあらゆる場面で継続して消費者に接する人であり、その営業職員に専門性と職業倫理を追求する人材を育成することは消費者にとって有益な情報やサービスを提供する人材となり、消費者志向経営を実践する人材ともなり得るものと考える。

 

第二の「業務品質向上の実践」については、「お客さまの声に係る取組み」として、「お客さまの声の受付件数、改善の実施」と「ご契約の継続」、その指標として「ご契約の継続率、解約・失効率」を挙げている。現在多くの企業が消費者の声に対しては積極的に取組んでお客さま満足の向上に力を尽くしている。しかし、同社ではこれらを従業員の「自律的」な取組みと捉えているところが注目される。お客さま満足を目指すプロセスにおいて、従業員の自律的取組みを軸に業務品質の向上を図ることによって消費者志向経営の実現を図ろうとするものと考える。

 

なお、同社では消費者庁の進める消費者志向自主宣言だけではなく、金融庁の「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、取組方針・KPIを公表しており、消費者志向経営への積極的姿勢が窺える。

 

以上 

 

 

 

※本報告は,第一生命の「消費者志向宣言」、「『お客さま第一の業務運営方針』に基づく具体的取組みの進捗状況公表にあたっての基本的な考え方について」、さらに同社のホームページ等を参考に記載した。                     

 

第2回 資生堂 

 ベストプラクティス 

【資生堂ジャパン】動物実験廃止の社会課題の要請と消費者の安全性確保を目指すためにステークホルダー参加による円卓会議を実施 

サステナビリティ消費者会議 

2017922 

 

社会全体で企業の消費者志向経営を促すことを目的に、消費者志向自主宣言をした企業について、特に他社の模範となる取り組みをしている事例をベストプラクティスとして評価する。なお、ベストプラクティスとしての評価基準は次の3点とし、そのいずれかに該当する事例を紹介する。 

 

【評価基準】

1.消費者志向を消費者の声を聞き、消費者の不満・不利益の解決や商品等の改善を行うことにとどまらず、経営の仕組みの中枢に位置づけ、継続・実践しているもの

2.持続可能性に関わる社会課題に取り組み、持続可能な社会における消費者志向経営を追求しているもの

消費者志向自主宣言後、その取組みが著しく進展したことがフォロー報告で確認できるもの

  

上記事例は評価基準2に該当するものとして評価する。 

 

資生堂ジャパン(以下、資生堂)は、20103月に「化粧品における動物実験廃止を目指す」宣言をした。そして、「20113月までに自社での動物実験施設の閉鎖」、「20133月までに化粧品の動物実験廃止を目指す」という方針を打ち出したことをきっかけに、20106月第1回から20143月の第6回にわたり、有識者・学術関係者・動物愛護団体のステークホルダーが参加する円卓会議を開催した。そこでは、動物実験廃止に関わるさまざまな問題について議論を重ね、動物実験代替法を中心とした新安全性保証体系を確立し、20134月より開発に着手する化粧品・医薬部外品における社内外での動物実験を廃止することになった。

 

これまで動物実験は、原料や製品の安全性を確認する手段として社会的に位置づけられており、特に化粧品は、肌に直接触れるため、消費者からはさらに厳しい安全性の確保・評価が求められていたものである。しかし、この円卓会議に参加している「動物実験の廃止を求める会(JAVA) 」理事の亀倉氏は円卓会議の第1回目、「2009年初頭からは『資生堂の動物実験反対キャンペーン』を実施し、消費者一人ひとりが動物実験反対の意志を資生堂に伝えるアクションを促したり、約46,000人の署名とともに公開質問状を届けたりする活動を展開しています。・・・『無抵抗な動物を苦しめてまで、美しくなりたいとは思わない』という消費者の気持ちを汲んで欲しいのです。」と訴えたように、現在では動物福祉の問題は重要な課題とされ(*1)、多くの動物が犠牲になることが認められなくなっている。しかし、消費者の安全性の確保も重要な課題であることから、安全性と動物実験の問題、さらにはメーカーの情報開示や消費者の理解が必要になるという様々な問題に対し、どのように解決していくかが問われているところである。資生堂の動物実験の廃止に関する円卓会議はまさにこれらの問題に対して、関係するステークホルダーの参画により、どのような解決が必要かを議論した貴重な場であったと言えよう。

 

最後の第6回目の円卓会議において、参加者からは「さまざまなステークホルダーが一堂に集まり、利害関係を超えて議論できた結果、イノベーションを生み出した」「対立する意見を持つステークホルダーとの円卓会議の開催は、非常に勇気のいることだが、本円卓会議は、エンゲージメント事例として、日本企業におけるベストプラクティスではないか」の声が寄せられている。 

 

現代社会は、消費者の安全などの基本的な権利の確保とともに、社会の在り方として持続可能性が求められ、環境、人権などさまざまな社会課題が提起されている。そこでは消費者も社会の一員として商品・サービスの選択の在り方が問われるだけではなく、企業においては持続可能な社会に向けてどのような消費者志向経営を目指すのかが問われるようになっている。資生堂の動物実験廃止を目指した円卓会議は持続可能な社会における消費者志向経営の模範になる事例と考える。 

 

    *1 2013311日、EUでは化粧品の動物実験が例外なく完全に禁止となった。

              http://www.java-animal.org/what-you-can-do/guide

              http://ec.europa.eu/growth/sectors/cosmetics/

 

 参考にした情報 

・資生堂ホームページhttp://www.shiseidogroup.jp/sustainability/challenge/experiment/ 

 サステナビリティ「消費者課題」「動物実験と代替法に対する取り組み」 

NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVAhttp://www.java-animal.org/ 

 

 

第1回 保険会社

 ベストプラクティス 

【保険会社】自社の経営の仕組みとして各種委員会に消費者関連団体や消費者問題の専門家を社外委員としていることは消費者の声にもとづくコーポレートガバナンスの確保となっている

 

サステナビリティ消費者会議(CCFS 

2017922

解説 

 

社会全体で企業の消費者志向経営を促すことを目的に、消費者志向自主宣言をした企業について、特に他社の模範となる取り組みをしている事例をベストプラクティスとして評価する。なお、ベストプラクティスとしての評価基準は次の3点とし、そのいずれかに該当する事例を紹介する。 

 

【評価基準】

1.消費者志向を消費者の声を聞き、消費者の不満・不利益の解決や商品等の改善を行うことにとどまらず、経営の仕組みの中枢に位置づけ、継続・実践しているもの

2.持続可能性に関わる社会課題に取り組み、持続可能な社会における消費者志向経営を追求しているもの

3.消費者志向自主宣言後、その取組みが著しく進展したことがフォロー報告で確認できるもの

  

上記事例は評価基準1に該当するものとして評価する。

 

最近、保険会社において、消費者の視点にもとづく「お客さまサービス」、「コンプライアンス」などの向上や業務改善への取組みに消費者関連団体や消費者問題の専門家を社外委員として参画させる委員会・会議等を設置する取り組みが増えつつある。

 

その背景には、2005年ころから発生した、保険会社の保険金不払い・支払い漏れ等の社会問題化がある。その後各保険会社は消費者への適切な支払のための取組みを強化してきた。保険は消費者にとってはその内容が見えにくいだけではなく、その仕組みや用語などがわかりにくい商品であることから、消費者の信頼を獲得し、消費者志向経営を実現していくためには、保険会社が契約者である消費者の声を聞き業務改善に取り組むだけではなく、消費者問題の専門家などの社外の視点を取り込むことが消費者志向経営のためのガバナンスの確保として有効であると考える。

 

今日、日本においては、企業のお客さま部門が消費者の声を受け止め、商品・サービスの改善に活かすことはかなり普及してきたが、消費者や企業を取り巻く社会状況が複雑化する中で、商品等の購入者の声を聞くのみでは消費者志向経営の取組みとしては十分ではないことから、保険会社のこれらの取組みは他の業種へも広く普及していくことが望まれるところである。 

 

以下は、消費者庁の消費者志向自主宣言をした企業のなかから、自社の委員会等に消費者団体や消費者問題の専門家を社外委員として活用している例である。なお、これらの取組みについては、企業が発行している報告書やホームページなどで確認した(2017819日現在) 

 

番号

企業名

事例

出所

住友生命保険

 

CS向上アドバイザー会議

2008年から実施)

ホームページ

太陽生命保険

・サービス品質向上委員会

(開始時期不明)

 CSRレポート2016

第一生命

・品質諮問委員会(2006年から実施)

・消費者モニター制度(1984年から実施)

・消費者問題研究会(1985年から実施)

お客さまの声白書2017

大同生命保険

・保険金等支払審議会(※開始時期不明)

CSRレポート2016

T&Dフィナンシャル生命

・サービス監理委員会(※開始時期不明)

CSRレポート2016

日本生命

・消費者モニター会議

(※開始時期不明、2013年からの実施を確認)

「お客さまの声」白書

三井生命保険

・保険金等支払審議会(2008年から実施)

IR報告書

明治安田生命

・お客さまサービス推進会議

(2005年から実施)

・消費者専門アドバイス制度

(2008年から実施)

「お客さまの声」白書

 

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